〔代表句〕
・咳をしても一人
・墓のうらに廻る
・糸瓜(へちま)が笑つたやうな円右(えんう)が死んだか
・一人分の米白々と洗ひあげたる(小浜にて)
・考えごとをしている田螺が歩いている
・蛙たくさん鳴かせ灯を消して寝る
・淋しいからだから爪がのびだす
・昼寝の足のうらが見えてゐる訪(おとな)ふ(京都にて)
・漬物石になりすまし墓のかけである(小豆島にて)
・すばらしい乳房だ蚊が居る
・爪切つたゆびが十本ある
・一人の道が暮れて来た
・汽車が走る山火事
・月夜の葦が折れとる
・枯枝ほきほき折るによし
・渚白い足出し
・はるの山のうしろからけむりが出だした
・足のうら洗えば白くなる
・肉がやせてくる太い骨である
・波音正しく明けて居るなり
・仏にひまをもらつて洗濯してゐる
・大空のました帽子かぶらず
・いれものがない両手でうける
・夕日の中へ力いつぱい馬を追ひかける(一燈園にて)
・一日物云(い)はず蝶の影さす(須磨寺にて)
・考えごとをしている田螺が歩いている
・こんなよい月を一人で見て寝る
・一人の道が暮れて来た
・春の山のうしろから烟が出だした(辞世)
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