しかし、ニトログリセリンの不安定性は大問題で、事実、1864年9月3日にはグリセリン精製中に爆発事故が起こり、ノーベルの弟を含む5人が死亡、ノーベル本人も負傷している。
その後はニトログリセリンの安定性を高める研究に没頭し、1866年には不安定なニトログリセリンをより安定化するダイナマイトを発明、1867年アメリカとイギリスでダイナマイトに関する特許を取得した。ニトログリセリンを珪藻土に浸み込ませ安全化したものである。
1871年、50カ国で特許を得る。そして、全世界で100近い工場を立ち上げ、世界中の採掘現場や土木工事に使われるようになり、ノーベルはその時代の寵児となる。
1875年にはダイナマイトより更に安全で強力なゼリグナイトを発明している。更に、ロケットの推進剤にも使用できる無煙火薬の先駆けともなるバリスタイトも発明した。
1878年には、現在のアゼルバイジャンのバクーで、ノーベル兄弟石油会社を設立した。この会社は、1920年にボリシェヴィキがバクー制圧して国有化されるまで存続した。
1895年11月27日、持病の心臓病が悪化したため、ノーベル賞を設立することになる有名な遺言状を書く。1896年12月7日、脳溢血で倒れる。倒れた直後に「電報」という言葉を残し、親戚が集まる中、3日後の12月10日に死去した。満63歳だった。
遺言で賞を授与するとした最初の3分野は、〔物理学〕〔化学〕〔医学または生理学〕であり、4つ目は〔理想的な方向性の文学〕とされた。そして、5つ目は〔軍縮や平和推進に貢献した個人や団体〕とされている。
尚、数学分野はノーベル賞に含まれていない。これに対して、ノルウェー政府は、2001年に、同国出身の数学者ニールス・アーベルの生誕200年(2002年)を記念して、アーベルの名を冠した新しい数学の賞を創設している。
ノーベル賞の受賞は、1901年に始まっている。次の六つの分野で顕著な功績を残した人物に贈られる。
・物理学賞
・化学賞
・生理学・医学賞
・文学賞
・平和賞
・経済学賞
六つ目の経済学賞だけは、1968年にスウェーデン国立銀行設立300周年祝賀の一環としてノーベル財団に働きかけ設立されたものである。
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