ホーキング |
スティーヴン・ウィリアム・ホーキング は、イギリスの理論物理学者です。 通常は単に親しみを込めて〔ホーキング博士〕と呼ばれています。 若い時代に発症した〔ALS:筋萎縮性側索硬化症〕という疾患のために、身体が不自由で「車椅子の物理学者」としても知られています。 |
一般相対性理論に関わる分野での理論的研究が専門で、多くの理論的成果を発表しています。 1963年には、ロジャー・ペンローズと共に〔ブラックホールの特異点定理〕を発表して、その名を世界的に知らしめました。ブラックホールには、一般相対性理論が破綻する特異点が存在するという定理です。 1971年に、宇宙創成直後には小さなブラックホールが多数発生するとしています。 1974年には、一般相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論を発表し、量子宇宙論という理論分野を創出して、現代宇宙論の進化に大きく貢献しました。 これは、いわゆる〔ホーキング放射〕の理論で、ブラックホールは素粒子を放出し続けることで衰退し、やがて爆発して消滅する、という理論です。 ホーキング博士のもう一つの成果は、「時間順序保護仮説」の提唱であり、タイムトラベルは不可能であるとするものです。過去に移動するには無限大のエネルギーが必要だからです。 ところで、ALS疾患では、一旦進行が始まると通常数年程度で死に至ることが多いのですが、ホーキング博士の場合には、進行が弱まり、発症から50年以上経過した現在でも、声を失うなど不自由があるものの、立派に宇宙論研究を続けています。ALSは筋肉には損傷を与えますが、頭脳は筋肉ではないので、精神活動は健全なのです。 彼は日常生活や研究活動において、意思伝達の方法として、コンピュータ支援による〔重度障害者用意思伝達装置〕を用いています。研究発表などでのスピーチや日常会話は合成音声で行います。 理論宇宙論は極めて難解な学問分野ですが、彼は一般人にも分かりやすい解説書などを多数著わしていて、各国語に翻訳されています。 |